お葬式が高い理由は業界の特性にある。安い広告を鵜吞みにして高額請求されないために知っておきたい葬儀業界の特性とは

お葬式

お葬式の値段は高いと思いますか?安いと思いますか?

お葬式の値段は高いと思いますか?安いと思いますか?と聞かれれば、ほとんどの人は高いと言うでしょう。実際働いていても高いと思います。
ですが、みかける広告は格安葬儀ばかりです。
葬儀業界にいると、格安の広告を頼りに葬儀を執り行ったら請求金額が跳ね上がっていた、なんてことも聞きます。

そこで、安くできると思っていたら高くなってしまった。後味の悪いお葬式になってしまったとならないように、お葬式の値段は高いものだという前提で、お葬式に臨めるように葬儀社職員目線で解説してみます。
けっして、値段が高いお葬式を肯定しているのではありません。

お葬式は高いものだと思って臨んだ方が結果的に安く行えるということもあるのです。

お葬式の値段が高い理由とは?

お葬式が高いのはなぜでしょうか。

インターネットで調べるとその理由を解説している人がたくさんいます。
まずは、どんな理由が挙げられているか調べてみましょう。
今は便利な時代ですね。AIアシストで書かれる項目には次の6点があげられています。

  • 葬儀本体費用
  • 車両費用
  • 式場使用料
  • 飲食費
  • 返礼品費
  • お布施(宗教者へのお礼)

これらの項目の積み重ねで葬儀費用は高くなるとあります。
さすがですね。間違いないと思います。
でも、この6項目の積み重ねが本当の理由なのでしょうか?

お葬式が高いのか安いのかを身の回りにある物の生涯購入回数を比べてみる

考えやすいので対象年齢は20歳から70歳の50年間とします。
たとえば、外食店について考えてみましょう。
4人家族の我が家では月平均10万円を予算としています。一ヶ月90食とすると、一食1,100円程度で、一人にすると約300円です。
一日3食食べるとして、一年で1,095食。50年で54,750食。つまり、54,750回の食事機会のうち何回外食をするかという選択ができます。
飲食店は50年間で一人につき54,750回販売できるチャンスがあります。その54,750回の分母のうち何回利用してもらえるか、で商売をします。

つぎに、皆さんが使っている携帯電話・スマホです。令和5年の集計では平均4.4年で買い替えるようです。分かりやすく4年とすると、50年で12.5回買い替えます。2023年のスマートフォン1台あたりの平均価格は82,622円。販売店は約83,000円を売る機会が12.5回あります。

家庭用冷蔵庫の場合
4人家族用で450Lで20万円として、10年ごと買い替えると5回。

車はどうでしょうか。
新車の価格は車種によってさまざまですが軽自動車で150万円ほど。ワンボックスカーなら350万円ほどでしょうか。車の買い替え期間の平均は7年ほど。50年で7回程度150~350万円を売る機会があります。

買い替えの頻度が低いとその商品の単価は高価なものが多いですね。

購入機会が多ければ多いほど、それを売る機会は当然多くなります。また、食品や消耗品などを買う場所は、購入希望者が移動する範囲の中で行われます。一方、購入機会が少ないものは、居住地などを拠点として購入されます。家電や車を買うためにわざわざ県外まで赴く人は少数派でしょう。

そして、一生に一度の買い物といわれるのが、家です。
新築一戸建てのマイホームを土地と建物合わせて購入した場合。その地域の相場や建売か注文住宅かによって大きく違いますが、3,000万円~6,000万円程度です。

では、お葬式はどうでしょうか。
お葬式は買い替えしません。お葬式を「買う」時は、その人が亡くなった時です。命は一度きり。お葬式は一人につき一回しか買うことが出来ません。お葬式の平均金額は地域によって違いますが、通夜葬儀を行う「家族葬」や「二日葬」であれば、平均120万円程度です。

購入品平均価格生涯購入回数(平均)
食事約300円54,750回
スマホ約8万円12.5回
冷蔵庫約20万円5回
約150万円~350万円7回
約3000万円~6000万円1回
お葬式約120万円1回

本当に一生に一度の買い物です。同じ一生に一度の買い物のなかで比べるとお葬式は家より断然「安い」といえます。

なぜ、一生に一度の買い物の中で家より安いお葬式は「高い」のか

お葬式の値段が高くなる理由を業界の特性に注目してお話しします。
高くなる理由。それは葬儀業界の最大の特性に原因があります。

特性① 依頼件数には限界がある。

お葬式は一人一回しか購入できません。つまり、すでに販売機会は決まっていて、それは人口の数と同じです。2025年の日本の人口は1億2359万人。
ここで、勘違いをしてはいけません。お葬式をわざわざ県外にいって執り行うことは、よほどの理由がない限りありません。また、二つ三つ隣の市町村で執り行うこともありません。(なかには地域の習慣や火葬場の立地の問題で、遠方でお葬式を執り行うところもあると思います。)

ですので、日本全体の人口ではなく、県から市町村へとお客様対象者は限定されていきます。また、葬儀社の商圏エリアは式場を中心として半径約2kmとする考えがあります。
つまり、葬儀社が販売のチャンスを掴める対象としているのはその範囲に住んでいる人口。その人数が依頼件数の分母になります。

特性② 人はいつ亡くなるか分からない。

人はいつ亡くなるか分かりません。そして、たとえ商圏範囲内の人が亡くなってもお仕事をいただけるかどうか分からない、というのが葬儀業界の特性です。

いつお仕事を頼んでいただけるか分からない。立て続け、引っ切り無しに頼まれるかもしれないけれど、一ヶ月たって一件もお仕事がないかもしれない。次の仕事がいつになるのか保証がない。
というのが、葬儀業界最大の壁といえるでしょう。

それでも、いつお仕事を頼まれても対応できるように、人員は確保しなければいけないし、式場などの施設もきれいに保たないといけません。お仕事がなくても、職員を雇い続けるためには、一回のお葬式で利益を確保しないといけないのです。

それゆえ、お葬式は高くならざるを得ないといえます。

なぜ、お葬式は高いのに安いお葬式の広告が広まっているのか

お葬式は高くならざるを得ないものだとお話しさせていただきましたが、世の中には同業者から見ても格安のお葬式の広告が広くみられます。
同業者からすると、その金額でお葬式ができるなんてほぼ無理でしょ、と思えますが、そうでない方々からすると、その格安お葬式はとても現実的で、経済的にも救いの手のように見えると思います。

葬儀社同士は「家族が亡くなった」という第一報の取り合いをしている

家族が亡くなり、病院から「なるべく早く葬儀社を決めてお迎えに来てもらってください」と言われたとします。ネットで探し葬儀社に連絡をする。1~2時間待って搬送車が到着して、自宅や式場に安置をします。故人の話をし、宗教者に連絡して日程を決めて、いざお葬式の打ち合わせが終わってみると、予想よりはるか上をいく見積もりになっていた、とします。そんな時、安い所を探してもう一度最初からやり直すという人は、かなり少数派です。

危篤ですといわれてから病院に駆けつけ、容態が安定するといったん家に帰るけど、またいつ危篤連絡が来るか気が気じゃない日常の終わりに、いざ亡くなってから葬儀社への打ち合わせまで行った家族に、もう一度同じことを繰り返す体力は、普通残っていません。

予想より高い金額になってもそのまま進んでいってしまうことがほとんどです。
それでも安い広告が多いのは、安いプランを宣伝しておかないと、その「亡くなった」第一報が取れないからです。

依頼に繋がればあとは、つぎは営業マンの仕事です。

オプションを追加して単価を上げるのが営業マンの仕事

葬儀社以外で考えても、特に営業マンは売上ノルマや目標がありますよね。いつまでにいくらの売上を達成するのか。何件の契約をとってくるのか、とか。
(筆者の会社はノルマがない変わった会社なのでオプションを無理強いすることはありませんが)

葬儀社の職員にも当然ノルマや目標があります。どれだけオプションを売ってきたか、どれだけ売り上げをあげたのか、で評価や給料(手当・インセンティブ)に関わります。
ですので、葬儀の打ち合わせをしている職員は、いろんなパターンでオプションを追加するようにトークを広げます。

できれば、悪徳と思わないでもらえると嬉しいですが、一般的には馴染みのない世界なので「故人様のためにこういうのがあるといいですよ。少しお金はかかりますが」などといわれると、故人(家族)のためなら、とそのオプションを追加する遺族も多いでしょう。

冷静な判断をしにくい状況ですが、焦らずに、本当に必要な物かそうでないのか、予算内で収まるのかなど考える時間をつくるようにしましょう。

「亡くなった日やその次の日に通夜を執り行わないといけない」という決まりはありません。葬儀後の生活の方が大事だと思いますので、あまり無理せずにできる範囲でお葬式をしてあげましょう。

まとめ お葬式が高い4つの理由

お葬式の値段が高い理由には葬儀業界の特性が背景にあるからといえます。

  • お葬式が高いのは複雑な料金体系の積み上げではなく、一人一回しかお葬式をすることができないから。
  • 葬儀社は次の仕事がいつになるか分からないから、1件から利益を確保しないといけない。
  • 葬儀社は安い価格の広告を広めて「亡くなった」という第一報の取り合いをしている。
  • 単価を上げるのが営業マンの仕事。

葬儀業界にはこういった特性があります。

後味の悪いお葬式にならないように、終活の一環として事前見積もりをすることをすすめします。

この記事を書いた人
ぶち

葬送屋ブログ管理人
はじめまして。葬儀社に勤めて15年ほどたった、現役葬儀社職員のぶちです。
二児の父。読書と塗り絵が趣味です。

価値観や宗教観が変わってきたと感じるところもありますが、その中でも変わらないものもあるように感じます。

ここでは、葬儀社に現役で勤めている私が葬儀に携わりながら感じたこと、考えたことなどを書いていこうと思います。

そのほか、読んで良かった書籍なども紹介していきます。

どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。

ぶちをフォローする
お葬式
シェアする
ぶちをフォローする
タイトルとURLをコピーしました